研究計画書セルフチェック

疫学統計の基礎

研究計画書が書けたら、計画書を見直してみましょう。
研究計画書の書き方はこちら>>研究計画書を作成する
他人とディスカッションをしながら研究計画書を練り上げることが研究のスタートにおいてとても重要ですが、その前に研究計画書を見直してみましょう。

今回チェックする項目は5つです。

 □リサーチクエスチョンは一貫しているか?

 □複数のリサーチクエスチョンが含まれていないか?

 □アウトカムの勘違いはないか?

 □抽出項目に漏れはないか?具体的になっているか?

 □実現可能な研究か?

①リサーチクエスチョンは一貫しているか?

②複数のリサーチクエスチョンが含まれていないか?

「当たり前」と思うかもしれませんが、意外と一貫していない研究計画書をよく見かけます。

研究計画書には研究を行うに至った背景、目的、臨床的意義、仮説など、いろんな方向からリサーチクエスチョンについて記述していきます。枝葉にとらわれて幹を見失っていませんか?

悪い例)目的:心不全治療薬Aが心不全再入院を減らすかどうかを明らかにする。
臨床的意義:心不全治療薬の有効性を明らかにすることで心不全患者のADLを上げることができ、よりよい心不全加療に貢献する。

アウトカムが「心不全再入院」から「ADL」にすり替わっていますね。確かに心不全再入院とADLは関連する項目かもしれませんが、「心不全再入院が減る」=「ADL向上」と考えるのは疑問が残ります。
Secondary outcomeとして「ADL」を評価してもよいですし、他の研究として心不全とADLの関連を研究するのもよいでしょう。

③アウトカムの勘違いはないか?

アウトカム(主要評価項目)は「死亡」、「疾患の発症」など、あり・なしで答えられる項目や検査値などの数値といった具体的な項目になるはずです。
「A(暴露)とB(疾患)との関連を明らかにする」などと記載しているものを見かけますが、これはアウトカムと言えません。この場合であればアウトカムは「B」となります。

④抽出項目に漏れはないか?具体的になっているか?

実際にどのデータを抽出するか、明らかになっていますか?他の人が見たときにこの研究を実行できるでしょうか?
患者背景、基礎疾患などでは不十分です。背景因子、疾患は山ほどあり、研究の目的によって抽出しなければならない項目は違ってくるはずです。

例)
「患者背景」ではなく、身長、体重、BMI…
「基礎疾患」ではなく、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、脳梗塞…
「術中所見」ではなく、手術時間、出血量、摘出した腫瘍の直径、腹水の有無、癒着の有無…

エクセルファイルにデータをまとめることを考えながら、どの項目が必要かを具体的に挙げていきます。

⑤実現可能な研究か?

研究には費用や時間、サンプル数、得られるデータなどたくさんの制約があります。行うことができる範囲で最良の研究ができるように努めます。制約を考慮し、実現可能な研究かもう一度検討しましょう。

地味な作業ですが、とても大事です。チェックできたら他の人とdiscussionして研究計画書を練り上げましょう!

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