リサーチクエスチョンを明らかにしよう!

疫学統計の基礎

はじめに

今、こちらを読んで頂いている方はこれから新しく臨床研究を始めようとしている方が多いのではないでしょうか?時々、データまずありき、の人を見かけますが、それでは本当に人の役に立つ研究はできません。より有意義な研究を行うためには、どうしたらよいでしょうか?

研究にはたくさんのステップがあります。まず、普段の臨床において感じている疑問(クリニカルクエスチョン)からスタートさせましょう。クリニカルクエスチョンから研究によって明らかにしたいことをはっきりさせてリサーチクエスチョンとします。それに基づいて研究計画を立て、データを収集し、分析・解析をし、結果をまとめ、解釈して報告する。その流れの中で目的を見失わずに筋の通った研究をするために、最初の段階であるリサーチクエスチョンの設定、研究計画書の作成は大変重要です。

ここではまず、研究の背骨ともいえるリサーチクエスチョンを作ることから始めましょう。研究によって「何を知ろうとしているのか」「それがわかることによって、臨床的にどのような意義があるのか」、を明らかにすることでより有意義な研究になります。

リサーチクエスチョン(RQ)とは?

PICOとか、PECOとか一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?PICOやPECOに落とし込むことで臨床上の疑問がシンプルかつ具体的になります。

P: Patients/Participants 誰に(対象)
I: Intervention E: Exposure ある介入をすると/ある要因があると
C: Comparison ない場合と比較して(比較)
O: Outcome どうなる(効果)

例1)疑問:心不全の新しい薬Aが開発されました。既存の薬Bと比較して、どちらがよいだろう?

P: 心不全の患者
I: 薬A の内服
C: 薬Bの内服
O: 心不全再入院

研究の目的:心不全の患者において薬Aは薬Bと比較して、心不全再入院を減少させることができるかを検討する。

何かしらの介入がある場合にはPICOを用います。

RQを作る場合には具体的なOutcomeの設定も大切です。薬Aと薬Bはどちらがよいか、ではぼんやりしていて何を明らかにしたいのかがわかりません。心不全再入院なのか、死亡なのか。実際にはprimary outcome、secondary outcomeを複数のOutcomeを設定することが多いですが、ここではメインとなることをOutcomeに据えましょう。

例2)疑問:デスクワークは胃潰瘍のリスクになるのだろうか?

P: ○○市の健康診断を受診した20歳以上の人
E: デスクワーク(事務作業)
C: デスクワークが中心ではない人(肉体労働、営業職、技術職)
O: 胃潰瘍の発症

研究の目的:デスクワークが胃潰瘍のリスク因子となるかを検討する。

曝露の有無が疾患の発生に寄与するかを知りたい場合はPECOを用います。
ただしこの場合はデスクワークの定義(1日座位での作業が何時間以上、など)が必要となります。

PICO/PECOがうまく使えない場合もあります。比較対象のない観察研究などではPEOを用います。

例3)疑問:降圧薬内服を行っている高血圧患者の何%に心血管イベントが起こるのか?

P: 高血圧患者
E: 降圧薬内服
O: 心血管イベントの発生

研究の目的:降圧薬内服を行っている高血圧患者の心血管イベント発生率を調査する。

RQのチェックポイント

①各項目は具体的かつ明確になっているか?
②必要なデータは入手可能か?(計画の実行は可能か?)

PICO、PECOに当てはめることでぼんやりしていた疑問がクリアになってきたのではないでしょうか。

次回は早速研究計画書の作成を行います。

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